特集コラム
給食提供における食物アレルギー対策 応用編
前回は、食物アレルギーの基礎知識についてお話しました。今回は、保育所と学校において実際に食物アレルギー児を受け入れる際の対応方法についてお話しします。
●保育所における食物アレルギーの対応
保育所においては、2019年4月に厚生労働省から出された「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」を活用し、対応していきます。保育所はアレルギー疾患を有する子どもに対して、その子どもの最善の利益を考慮し、教育的および福祉的な配慮を十分に行うよう努める責務があり、医師、保護者、保育所の重要なコミュニケーションツールとして「生活管理指導表」に基づく対応が必須になっています。
また、保育所におけるアレルギー対応の基本原則として、「家庭で食べたことがない食物は、基本的に保育所では提供しない」ことになっています。そのため、全入所児に対して、給食で提供する代表的な食物をまず家庭で食べてもらい、何らかの症状が誘発されないかを確認した上で、給食を提供していきます。その際、次のような取り組みを行うことで、家庭と保育所双方での確認がスムーズになり、事故を未然に防ぐことにもつながります。
・食品摂取チェック表などを作って連絡帳に貼り、保護者と保育所が常に把握できるようにする。
・事前に献立表を提供し、これまで食べたことのない食物がないか保護者へ確認する。もし食べていないようであれば、事前に食べてもらうよう周知する。
●学校における食物アレルギーの対応
学校給食においては、平成27年3月に文部科学省から出された「学校における食物アレルギー対応指針」に基づいて対応します。学校給食における食物アレルギー対応の原則的な考え方は、「安全性の確保のために、従来の多段階の除去食や代替食提供は行わず、原因食物を提供するかしないかの二者択一を原則的な対応とすることが望ましい」とされています。
また、アレルギー対応を希望する保護者には、医師の診断による「学校生活管理指導表」の提出を必須としています。
家庭では必要最小限の除去にとどめることが、食物アレルギー児のために重要ですが、集団給食では、“食べられる範囲”に合わせた個別対応をすることは推奨されていません。それは個別対応を行うことで、調理・配膳が煩雑になり、誤食事故の危険性を高めるためです。誤食事故を予防するために、集団給食では完全除去を基本とした除去食・代替食対応を行うことが望ましいとされています。
●調理従事者のコンタミネーションを防ぐ方法
安心・安全の給食提供を行う上では、施設ごとに献立作成から調理作業、受け渡し、配膳においてリスクを減らす工夫が必要になってきます。広い施設であれば普通食とアレルギー対応食を分けて作業できる調理場所や、動線を変えることもできるでしょうが、このようなスペースを確保できない施設の方が多いかと思います。
コンタミネーションを防ぐためにも、おのおのの施設においてどのような方法をとるとミスなく提供できるのかについて、調理従事者だけでなく、食物アレルギー児に関わる全ての職員と一緒に検討することが大切です。
例えば、「原因食物を使っていることがわかる献立名にする」、「調理器具に目立つ印をつけ分ける」、「受け渡し・配膳の工夫として、人から人への受け渡し時のダブルチェック」、「配膳するトレーの色を変える」など、いろいろ考えられると思います。
東京都教育庁地域教育支援部義務教育課から出されている「学校における食物アレルギー対応 ヒヤリハット・ヒント事例集」を参考に、職員の意識向上のための研修や講座を実施して連携するのもよいと思います。
●まとめ
食物アレルギーへの対策はこの20年余りで大きく進歩したため、現場内でも知識や理解に差が生じたり、食物アレルギー児への対応もさまざまなため混乱している施設もあるかもしれません。各施設において、指針やガイドラインをよく理解し、安全な給食運営を行っていただければと思います。
参考文献
・厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」2019年4月
・文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応指針」平成27年3月
・東京都教育庁地域教育支援部義務教育課「学校における食物アレルギー対応 ヒヤリハット・ヒント事例集」平成29年3月改訂
・厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」
・医歯薬出版「新版食物アレルギーの栄養指導」2018年8月