特集コラム
日本食品標準成分表2020年版(八訂)を詳しく知ろう! 炭水化物の細分化について
日本食品標準成分表2020年版(八訂)の改訂ポイントをより深く知っていただくために、改訂ポイントの1つである炭水化物の細分化についてお話します。
●炭水化物の細分化とは
これまでの成分表の炭水化物は、ヒトにおける消化性が低い食物繊維や糖アルコールから、消化性が高いでん粉、単糖類、二糖類までの多様な成分を含んでいました。しかしながら、糖類の摂取量・摂取エネルギーを正しく把握するためには、食品ごとの炭水化物の内訳を示すことが重要です。
そこで、今回の日本食品標準成分表2020年版(八訂)では、これまで蓄積してきたでん粉、しょ糖や食物繊維の分析値に基づき、これまでの炭水化物に含まれていた「でん粉と糖類(利用可能炭水化物)」と「食物繊維総量」、「糖アルコール」等が収載されています。
●炭水化物と利用可能炭水化物の違いについて
食品成分表八訂の「炭水化物」は、従来と同様、水分、たんぱく質、脂質、灰分等の合計(g)を100gから差し引いた、差し引き法で算出されています(※1。
一方、「利用可能炭水化物」は、炭水化物のうちヒトの消化酵素で消化できる(エネルギーとして利用性の高い)、でん粉、単糖類、二糖類を示します。
(※1 魚介類、肉類及び卵類のうち原材料的食品については、一般的に、炭水化物量が微量であり、差し引き法で求めることが適当でないことから、原則として全糖の分析値に基づいた成分値になっています。
●食品成分表八訂に掲載されている利用可能炭水化物(3項目)の使い分け
①利用可能炭水化物(単糖当量)
利用可能炭水化物(単糖当量)は、エネルギーとして利用性の高い、でん粉、単糖類、二糖類を単糖の質量に換算した総和です。
でん粉、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、イソマルトース、80%エタノールに可溶性のマルトデキストリン及びマルトトリオース等のオリゴ糖類等を直接分析または推計し、それぞれの質量に係数を乗じて(でん粉及び80%エタノールに可溶性のマルトデキストリンには1.10、マルトトリオース等のオリゴ糖類には1.07、二糖類には1.05)、単糖の質量に換算し、合計した値です。
利用可能炭水化物由来のエネルギーは、原則としてこの成分値(g)にエネルギー換算係数16kJ/g(3.75kcal/g)を乗じて算出します。
②利用可能炭水化物(質量計)
利用可能炭水化物(単糖当量)と同様に、でん粉、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、イソマルトース、80%エタノールに可溶性のマルトデキストリン及びマルトトリオース等のオリゴ糖類等を、直接分析または推計した値で、これらの質量の合計です。よって、この値は、利用可能炭水化物の摂取量の算出に用います。
③差し引き法による利用可能炭水化物
100gから、水分、アミノ酸組成によるたんぱく質(この収載値がない場合には、たんぱく質)、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量として表した脂質(この収載値がない場合には、脂質)、食物繊維総量、有機酸、灰分、アルコール、硝酸イオン、ポリフェノール(タンニンを含む)、カフェイン、テオブロミン、加熱により発生する二酸化炭素等の合計(g)を差し引いて求めます。
本成分項目は、利用可能炭水化物(単糖当量、質量計)の収載値がない食品等において、利用可能炭水化物に由来するエネルギーを計算するために用います。この場合のエネルギー換算係数は17kJ/g(4kcal/g)です。なお、差し引き法による利用可能炭水化物をエネルギーの計算に用いた場合、収載値の右に「*」を付けて明示してあるので、留意する必要があります。
参考文献
・文部科学省HP:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」、文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_01110_011.pdf
・文部科学省HP:「日本食品標準成分表の改訂について」、文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_00432_01.pdf