給食で不足しやすい栄養素とその強化方法②|特集コラム

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給食で不足しやすい栄養素とその強化方法②

    

      

今回は給食の献立を立てる際に不足しやすいミネラルやビタミンについて解説していきます。
 
前回の「給食で不足しやすい栄養素とその強化方法①」の中にあるエネルギーや食物繊維と同様、ミネラルやビタミン類も給与栄養目標量をもとに、食品構成表を確認しながら献立作成を行っていきます。

 
 

●献立作成の際に不足しがちな栄養素とは

献立の栄養価の数値が給与栄養目標量に対して不足している場合は、早急に適正な栄養量を提供できるよう修正することが必要です。
 
給食の現場で献立を作成する際、目標量に届きにくく不足が生じやすいミネラルやビタミンには、カルシウムや鉄、ビタミンCなどがあります。特にビタミンCはフルーツや野菜に多く含まれていますが、生で提供する場合は「流水でよく洗い、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウムで殺菌した後、流水で十分にすすぎ洗いを行うこと」と大量調理施設衛生管理マニュアルに記載されています。ビタミンCは水溶性で熱に弱い性質を持っている点で、実際のところ目標量を取れているのか、不足とまではいかないが満たすのに苦心されていることもあるでしょう。そのような場合も含めて、不足にならないような強化法を詳しく見ていきます。

 
 
 

●カルシウムの強化法

カルシウムが補える食品の一つに牛乳があります。毎日牛乳を献立に取り入れている給食施設では、極端に目標量に満たないということは少ないですが、牛乳を毎日取り入れていない給食施設では、カルシウムの目標量を満たすためにはちょっとした工夫が必要です。
カルシウムはヨーグルトやチーズなどの乳製品をはじめ、しらす干しや干しえびなどの魚介類、がんもどきや納豆などの大豆製品、小松菜やモロヘイヤ、切干大根などの野菜類に豊富に含まれています。メニューのバリエーションを意識しつつ、カルシウムの多いたんぱく質類を毎日加えるとよいでしょう。
 
さらに、カルシウムを補う秘訣としては野菜の摂取量を満たすことです。キャベツ不足とまではいかないが満たすのに苦心されているやごぼう、れんこん、にんじんなどの野菜にもカルシウムが含まれています。食品構成表と照らし合わせて野菜の総量を確認しながら献立に組み込んでいきましょう。

 
 
 

●鉄の強化法

鉄といえばレバーに多く含まれていますが、レバーはコレステロールも多く、メニューのレパートリーも限られているため、頻繁に取り入れるのは現実的ではありません。
牛肉にも鉄が多く含まれており、主菜に牛肉メニューを適度に加えるのが理想的ですが、豚肉や鶏肉と比べ高価なため、主菜で取り入れることが難しいということもあります。そのような時は、副菜の食材として少量加える方法もあります。
 
その他、あさりやシジミなどの貝類にも鉄は多く含まれています。中でもあさりの水煮缶は、鉄が多いだけでなく、むき身になっているので給食でも扱いやすい食材です。
生揚げや納豆などの大豆製品や魚類や肉類、卵などにも鉄は含まれています。たんぱく質にわりと多く含まれているため、必要な量を満たしていれば、ある程度鉄は補えているということになります。
さらに、大根の葉や菜の花、小松菜、枝豆などの野菜類にも鉄は多く、青菜に比較的多く含まれているので、青菜のメニューを意識することで不足分を補うこともできます。

 
 
 

●ビタミンCの強化法

ビタミンCはフルーツに多く含まれていて、毎日取り入れることが理想的です。しかし、給食現場では食材費の問題やオペレーション的に実施が難しいことも多いです。そうしたときは、ビタミンCが豊富なレモンやゆずの果汁を使用した和え物やドリンクなどを提供するのも一つです。また水溶性で水に流出しやすく、熱に弱い点も気になりますよね。
 
ビタミンCはパプリカやピーマン、ブロッコリー、かぼちゃ、じゃが芋、オクラなどの野菜類に含まれています。中でも赤パプリカはビタミンCが多く、色鮮やかな点を活かし、献立に取り入れることで全体的な色味もきれいになります。またじゃが芋に含まれるビタミンCはでんぷんによって守られているため加熱に強く効率的に摂ることができます。和え物など加熱後の流水をできる限り短くすることやブラストチラーを使用する、炒め物や煮物の加熱は短時間にするなどビタミンCの性質を考え調理する工夫も摂取量の強化に役立ちます。普段の献立に少量ずつ使うことでも、ビタミンCを日常的に補うことが可能になります。

 
 
 

●まとめ

献立の栄養価に栄養素の不足が生じたら、献立を見直して次に活かしていくことがとても大切です。また、栄養のバランスがバッチリな献立でも、残食が多いなどの問題が発生した場合は、原因を把握して献立を修正していくことが必要になります。栄養のバランスばかりに気を取られ、喫食者のことを置き去りにすることなく、食べ手のことをきちんと考え献立作成が必要です。ですからよりよい献立は一度作ったら終わりではなく、状況に応じて修正していく必要があるのです。給食は美味しく喫食してもらえることが一番大切です。

 
 
 

参考文献

・監修 香川明夫「八訂 食品成分表 2021 」 女子栄養大学出版部
・監修 飯田薫子・寺本あい「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社2020年10月30日発行第2版第4刷
・大量調理施設衛生管理マニュアル ( 平 成 9 年 3 月 2 4 日 付 け 衛 食 第 8 5 号 別 添 ) (最終改正:平成 28 年 10 月 6 日付け生食発 1006 第 1 号)

 
 
 

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